各国と貿易協定があるのに、さらに12か国間で交渉しているTPPです。
どのような状況なのか分かりずらいため、整理して置くことにします。
目次
まず、TPPとは何なのか?
今は、相手国との間で、お互いに貿易品目に対して関税額を決め、国と国で貿易協定を運用しています。
その取り決めは該当国間のみで有効でその関税を適用するために準備する書類も当該国のみに有効な書類の準備が必要です。
TPPは参加国すべてでその関税率を統一し参加国間で共通の関税を含む取決めを作るためのものです。
基本的には関税をなくすようにするものです。
それによって、TPP参加国内での貿易については共通の書類準備で行われるようになり実務のややこしさは減るのですね。
そして、関税を撤廃することを目指しているのです。
日本のTPPに対する考え方は?
より多くの貿易額を達成するためにTPPに参加することを考えています。
しかし、農業分野には日本が保護したい製品がたくさんあるのです。
関税を付けたままにし、その品目を保護したいと考えています。
それは農産物の5項目と586品目に対して、一定の自給率を保つことです。
5項目とは以下に関税額とともに上げておきます。
- 米 (関税778%)
- 麦類、小麦(252%)、大麦(256%)
- 牛肉(38.5%)、豚肉(136%)
- 乳製品 バター(360%)、牛乳(240%)、脱脂粉乳(218%)、チーズ(29.8%)
- 砂糖類 砂糖(328%)、でんぷん(234%)
そのほか野菜果物など586品目についても、数%から30%程度もしくはそれ以上の関税がかけられています。
実際には日本としては関税がTPPによって撤廃されることを望んでいませんがアメリカから言われているのでTPPには参加するのです。
実際に中国、韓国は参加しません。
特定の5品目の関税については自民党が絶対に譲らないと選挙公約にして自民党が前の衆議院選挙で大勝していますが日本政府は妥協し関税を減らす方向へ動いているのです。
最近では、豚肉、政府の公約では妥協しないはずでしたが安い豚肉(1キロ65円以下の豚肉)の関税が1キロあたり482円から50円へ変更になり高価格の豚肉の関税が4.2%から2,2%に下がり10年後に撤廃する方向になったのです。
この例から始まり、他の国からは交渉で(特にアメリカからの)撤廃を要求されることが予想でき、日本としては、関税額を引き下げる代替案を出して関税額引き下げという妥協していくことのなるのでしょう。
立場は弱くないはずですが、ギリシャのユーロ案受け入れの状態と似た道を歩みそうです。
TPPで関税が撤廃された時にどんなことが予想されるのか?
メリット
スーパーなどで食料を買う時に、輸入品が安く購入できるようになります。
食べ物屋さんでも原価が安くなるために安く提供してくれるところが出てくるかもしれません。
そして、海外の良い製品が身近なものになるのでしょう。
デメリット
日本の食料品が海外の製品とより厳しい価格競争にさらされることになります。
上記で見たように関税を課して保護している分野の農産物の中には100%以上の高関税がかされているものもあります。
その上、補助金まで渡して保護している分野もあるのです。
製品の関税がなくなることで、品質の良い安い製品が入ってくることも考えられ日本の通常の値段の商品では買われなくなることが懸念されるのです。
たとえば、乳製品。バターは360%の関税を課しています。
バターは30%程度ですが、補助金を与えて優先的に作っているのです。
関税がなくなることで、バターは多くの安く品質の良いバターが入ってくることが予想されますね。
バターは今の輸入品の4分の一程度になるのです。
また、野菜果物などは、農薬を使っている国内産の農産物との比較をしても海外産との優劣はつかないでしょう。
その中で、海外産の価格が安い場合には現状の日本の農産物では対応でき無くなるのではないでしょうか。
TPPで関税が撤廃されることにより日本の農業分野の衰退と自給率の低下が懸念されるのです。
日本の対応はどういう方向に向かうのか?
TPPに強気で臨む場合は?
もし、日本政府の担当者が交渉術にたけた人であるなら、交渉によって自分たちにとって良い方向へ向かうのが一番です。
場合によっては、参加を取りやめることも検討することです。
しかし、日本人で交渉にたけた人が、それほどいないのが現実ではないでしょうか。
交渉がうまくいかないことにより世界大戦に向かった歴史もあるのです。
TPP交渉からの離脱はないのでは?
妥協して先延ばししながらうやむやにして関税を撤廃する
コメの輸入の時もですが、長期間けて少しずつ関税率を下げていくという手法が、いつも使われてきました。
同じことが起こるのでは?
日本国内の農業の行方について
貿易の際の関税はその国の独自の産物を守るために、海外との価格差のある製品に課すことで同等の製品の価格差をなくすことでした。
それから行くと、高付加価値のある製品については関税は関係ないのです。
豚肉も、高級品は4%から2%に関税が変更になる程度で変化は小さいのです。
アメリカでも高級な豚肉は1キロ当たり20ドルくらいはします。
それはオーガニックのみを取り扱っている店舗のみだったりオーガニックコーナーのようなところですが。。。
つまり、ちょっといいものが集まる市場についてはアメリカでも海外でも需要があるのです。
そしてブランド化されていない商品ではTPP合意後は立ちいかなくなることが考えられます。
低価格商品の市場は、大規模に生産できる企業が独占します、それは、どの産業でも起こるように思います、
より多くの農産物を大量に安く生産できるところが市場の占有率を上げるのです。
日本の農業も他の輸入品と違うことを強調したブランドにして製品の質を高める必要があるように感じます。
まとめ
TPPによって関税が撤廃されると海外と同等の製品が作れるものは安い海外製品には太刀打ちできないようになることが予測できます。
そして、良いものを選ぶ傾向よりも安いものを選ぶ人が多いなら国内の農産物の分野によっては、よくない状況に陥るのです。
日本政府がTPPで妥協するにしても、農産業の戦略をどうするのか徹底して考え長期的な戦略を示していくことが必要なのでしょう。
これは、補助金などの、一時的な効果の出るばらまき政策ではなく長期的な視点に立ち、農業従事者が政府の補助なしに収入が見込める戦略でないと失敗に終わります。
今の日本は、補助金による保護政策により日本の農業が衰退し、収入も少なく、後継者不足になっているのです。